クリスマスよりも重要な立ち位置を占めるキリスト教の祝祭「Easter(イースター)」を控え、こちらアメリカでは既に一か月ほど前からウサギやひよこがスーパーの菓子売り場を占拠しています。イースターが一体何なのかを知らぬまま、色とりどりに染められた卵だけはなんとなく見覚えがある方も多いかと思いますが、今回はこの重大なイベントがどんなお祭りであるのかを徹底的に解明いたします。
イースターはキリスト教では最古となる祝祭で、今年のイースターは4月16日(日)で行われますが、これはカレンダー上で固定された日付ではありません。
イースターに限らずその前より開始となる一連の祝日はLunisolar(太陰暦)に従って日程が決定される為、現在世界で幅広く用いられているグレゴリオ暦とはずれが生じてしまうのだそうです。これも東方教会と西方教会で考え方が異なるようですが、西方では毎年3-4月あたりを彷徨っているようで、ただ「Easter Sunday」とも言われているように毎年決まって日曜日に到来するようです。
これには諸説あるそうですが、「Eostre」というアングロサクソンの女神の名前に由来しているというのが有力とされています。Eostreの他にあと9個ほど別の名前を持っていたと言われるこの女神ですが、そのルーツは全て春を意味する「Eastre」にあると考えられているそうです。私だったら自分の名前がそれほどあったなら、幾つかは忘れてしまうかもしれません。
一説では雪の寒さにより道端で凍死していた鳥が、女神Eostreによって暖かい毛皮を持つウサギへと変えられたのだとされています(この件に関しては「凍死」の他に「女神の怒りを買った為」、「鳥がお願いした為」などの説があるようです)。
前身が鳥であった為、このウサギはなんと卵を産む事ができたそうで、それを装飾してはEostreに贈っていたのだそうです。それが現在のイースターの日に色とりどりの卵を運んでくるバニー像につながっているようです。
また、かつて雌雄同体で生殖行為なくして子を設ける事ができたと考えられていたウサギが、キリストの母であるマリアのイメージにつながったのではないかと関連付ける意見もあるようです。あんなに無垢で可愛らしい顔をしたウサギがこんなにも謎に満ち溢れた生物だったとは驚きですね。
なお、このイースターバニーは1700年代にドイツからの移民を通じてアメリカに伝わったそうで、今では彩り豊かな卵に加え、キャンディやおもちゃまで運んでくるバニーとして知れ渡っていて、サンタクロースに似た存在としてみなされています。
日本人だからか分かりませんが、可愛い動物がおやつやおもちゃを持って来てくれる光景を思い浮かべると、なんとなくカモが葱を背負ってやって来る姿を重ね合わせてしまいます。
次にイースターの肝心要となる「Easter Egg(イースターエッグ)」ですが、その起源は卵を「もぬけの殻となったキリストの墓」と象徴とみなした事に始まるようです。
そして卵に装飾を施す行為は、古くはメソポタミアに生きた原始キリスト教徒の時代に遡るそうで、彼らは卵をキリストの血を想起させるべく卵を赤色で染め上げていたそうです。なお、ロシアなど東欧で顕著な東方正教会では現在でもイースターの日にはこの慣習を行っているようです。
また前回のセントパトリックスデーの記事でも言及しましたが、かつて「Holy Week」を含む40日間に渡って節食や禁酒が義務付けられていた「Lent (砂漠で悪魔の誘惑に遭いながらも40日間の苦難を乗り越えたキリストに倣う期間)」では、肉はもちろん乳製品や卵も一切食べる事が許されませんでした。
ですので、その苦行の終わりに到来するイースターは長い間自粛していた卵をようやく口にできる待望の日であり、特別感を演出するべく美しく装飾されるようになったと考えられています。ちなみに、アメリカではイースターに向けて毎年90億個以上もの卵が生産されているそうですよ。鶏さんも一苦労でしょうね。
なおLentは一カ月を超える大変長い期間であった為、その開始直前には家庭内にある卵を全て消費してしまう必要性がありました。
そのためLent(毎年日付は変わりますが、必ず水曜日から始まります)の前日となる火曜日は「Pancake Day(パンケーキデー)」と呼ばれるようになるほど、パンケーキを大量に作る事によって卵をなんとか使い切っていたようです。
ルイジアナ州にあるクレオール地域(フランスやスペインによる植民地化の歴史から、アメリカ国内ながら各国の文化を色濃く反映され独自の文化が形成されている地域)などでは、この火曜日に「Mardi Gras(フランス語で「Fat Tuesday(肥沃な火曜日)」」と呼ばれる小さな祝祭が催され、パレードが行われたりカロリーなどを気にしない豪華な夕食を楽しんだりするそうです。
古くからイースターの主役を張ってきた鶏卵ですが、時の経過と共に技術の進歩や文化の変革を迎えるにつれ台頭してきた新たな代替物によって、今やその圧倒的な地位が揺るぎ始めています。
それと言うのも、スーパーなどでよく見られるようになった着色されたアルミホイルで包まれた卵型のチョコレートや、カラフルなお菓子の詰まったプラスチック製の卵がイースターにおいてその勢力を徐々に拡大しつつあるからです。
確かに鶏卵は装飾に手間を要しますが、最初からイースター仕様につくられた既製品でしたらは購入後に現物を飾って終わりですからね。
ちなみに、このチョコレートエッグは1873年にイギリスのチョコレートメーカーが広めたのだそうです。企業による巧みな戦略が慣習の一部として息づくようになるとは、まるで日本の恵方巻ですね。
またチョコレートが象っているのは卵だけではありません。インターネットで検索してみると一目瞭然ですが、ウサギやヒヨコはたまた鶏まで模られています。このチョコレートバニーに至っては毎年9,000万個も生産されているそうです。
これほどまで夥しい数のウサギが市場に出回っているなんて、考えられないです。なおアメリカ人の76%はチョコレートバニーを頭から齧るそうですよ。
そして、イースターではしばしば登場するキャンディですが、これは1930年代から定着した卵ジェリービーンズというキャンディに端を発しているとのこと。
スーパーに立ち寄る度にいつも中央を占拠しているカラフルなひよこのお菓子が日本の「ひよこ」菓子を彷彿としていて、いつもなんとなく目を引かれるのですが、これは「Peep」という名前のマシュマロだそうで、なんと今ではイースターのチョコレート以外で最も有名なお菓子だそうです。
こちらも毎年7億個ほど消費されているそうです。
着色料をがっつりと使った見た目が完全に健康に悪そうなのですが、そこまで人気なのであれば少し試してみたい気もしますね。
あなたこのどぎつい色のゆで卵たべれますか?
実はクリスマスより古い!真相は未だ謎多き祝祭
イースターは日本では「復活祭」と訳されており、その名の通りキリストの復活を祝う日になります。十字架に磔にされたキリストは埋葬されて三日後に復活を果たしたとされており、キリスト教では「Holy Week」と呼ばれるイースター前日までの一週間で彼の磔刑と死を記念し、「Easter Vigil(イースター前夜)」に該当する時間帯(前日の日没から当日の日の出まで)よりイースターの祝祭が始まるそうです。イースターはキリスト教では最古となる祝祭で、今年のイースターは4月16日(日)で行われますが、これはカレンダー上で固定された日付ではありません。
イースターに限らずその前より開始となる一連の祝日はLunisolar(太陰暦)に従って日程が決定される為、現在世界で幅広く用いられているグレゴリオ暦とはずれが生じてしまうのだそうです。これも東方教会と西方教会で考え方が異なるようですが、西方では毎年3-4月あたりを彷徨っているようで、ただ「Easter Sunday」とも言われているように毎年決まって日曜日に到来するようです。
『イースター』の語源
そもそもこのイースターの語源になりますが、残念ながら私が予想していた「もっと東(east+比較級-er)」との関係性は全くもってありません。これには諸説あるそうですが、「Eostre」というアングロサクソンの女神の名前に由来しているというのが有力とされています。Eostreの他にあと9個ほど別の名前を持っていたと言われるこの女神ですが、そのルーツは全て春を意味する「Eastre」にあると考えられているそうです。私だったら自分の名前がそれほどあったなら、幾つかは忘れてしまうかもしれません。
ウサギが卵を産む!?バニーとエッグの関係性
そして最も皆さんが気になるであろう「Easter Bunny(イースターバニー)」の由来ですが、実はこれには諸説あるようで真相がいまだ解明されていないのが実情です。一説では雪の寒さにより道端で凍死していた鳥が、女神Eostreによって暖かい毛皮を持つウサギへと変えられたのだとされています(この件に関しては「凍死」の他に「女神の怒りを買った為」、「鳥がお願いした為」などの説があるようです)。
前身が鳥であった為、このウサギはなんと卵を産む事ができたそうで、それを装飾してはEostreに贈っていたのだそうです。それが現在のイースターの日に色とりどりの卵を運んでくるバニー像につながっているようです。
また、かつて雌雄同体で生殖行為なくして子を設ける事ができたと考えられていたウサギが、キリストの母であるマリアのイメージにつながったのではないかと関連付ける意見もあるようです。あんなに無垢で可愛らしい顔をしたウサギがこんなにも謎に満ち溢れた生物だったとは驚きですね。
なお、このイースターバニーは1700年代にドイツからの移民を通じてアメリカに伝わったそうで、今では彩り豊かな卵に加え、キャンディやおもちゃまで運んでくるバニーとして知れ渡っていて、サンタクロースに似た存在としてみなされています。
日本人だからか分かりませんが、可愛い動物がおやつやおもちゃを持って来てくれる光景を思い浮かべると、なんとなくカモが葱を背負ってやって来る姿を重ね合わせてしまいます。
イースターエッグの始まりは?
次にイースターの肝心要となる「Easter Egg(イースターエッグ)」ですが、その起源は卵を「もぬけの殻となったキリストの墓」と象徴とみなした事に始まるようです。
卵は古代より「新生活」や「復活」を表象するものであった事に加え、一見命が内在しているようには見えない様相にもかかわらず、その殻の表面にひびが入った途端に内部より生物が現れるといった有り様に、空っぽの墓とキリストの復活を重ね合わせたようです。
そして卵に装飾を施す行為は、古くはメソポタミアに生きた原始キリスト教徒の時代に遡るそうで、彼らは卵をキリストの血を想起させるべく卵を赤色で染め上げていたそうです。なお、ロシアなど東欧で顕著な東方正教会では現在でもイースターの日にはこの慣習を行っているようです。また前回のセントパトリックスデーの記事でも言及しましたが、かつて「Holy Week」を含む40日間に渡って節食や禁酒が義務付けられていた「Lent (砂漠で悪魔の誘惑に遭いながらも40日間の苦難を乗り越えたキリストに倣う期間)」では、肉はもちろん乳製品や卵も一切食べる事が許されませんでした。
ですので、その苦行の終わりに到来するイースターは長い間自粛していた卵をようやく口にできる待望の日であり、特別感を演出するべく美しく装飾されるようになったと考えられています。ちなみに、アメリカではイースターに向けて毎年90億個以上もの卵が生産されているそうですよ。鶏さんも一苦労でしょうね。
なおLentは一カ月を超える大変長い期間であった為、その開始直前には家庭内にある卵を全て消費してしまう必要性がありました。
そのためLent(毎年日付は変わりますが、必ず水曜日から始まります)の前日となる火曜日は「Pancake Day(パンケーキデー)」と呼ばれるようになるほど、パンケーキを大量に作る事によって卵をなんとか使い切っていたようです。
ルイジアナ州にあるクレオール地域(フランスやスペインによる植民地化の歴史から、アメリカ国内ながら各国の文化を色濃く反映され独自の文化が形成されている地域)などでは、この火曜日に「Mardi Gras(フランス語で「Fat Tuesday(肥沃な火曜日)」」と呼ばれる小さな祝祭が催され、パレードが行われたりカロリーなどを気にしない豪華な夕食を楽しんだりするそうです。
鶏卵の没落と新勢力チョコレートの台頭
古くからイースターの主役を張ってきた鶏卵ですが、時の経過と共に技術の進歩や文化の変革を迎えるにつれ台頭してきた新たな代替物によって、今やその圧倒的な地位が揺るぎ始めています。それと言うのも、スーパーなどでよく見られるようになった着色されたアルミホイルで包まれた卵型のチョコレートや、カラフルなお菓子の詰まったプラスチック製の卵がイースターにおいてその勢力を徐々に拡大しつつあるからです。
確かに鶏卵は装飾に手間を要しますが、最初からイースター仕様につくられた既製品でしたらは購入後に現物を飾って終わりですからね。
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またチョコレートが象っているのは卵だけではありません。インターネットで検索してみると一目瞭然ですが、ウサギやヒヨコはたまた鶏まで模られています。このチョコレートバニーに至っては毎年9,000万個も生産されているそうです。
これほどまで夥しい数のウサギが市場に出回っているなんて、考えられないです。なおアメリカ人の76%はチョコレートバニーを頭から齧るそうですよ。
そして、イースターではしばしば登場するキャンディですが、これは1930年代から定着した卵ジェリービーンズというキャンディに端を発しているとのこと。
スーパーに立ち寄る度にいつも中央を占拠しているカラフルなひよこのお菓子が日本の「ひよこ」菓子を彷彿としていて、いつもなんとなく目を引かれるのですが、これは「Peep」という名前のマシュマロだそうで、なんと今ではイースターのチョコレート以外で最も有名なお菓子だそうです。
こちらも毎年7億個ほど消費されているそうです。
着色料をがっつりと使った見た目が完全に健康に悪そうなのですが、そこまで人気なのであれば少し試してみたい気もしますね。
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